Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident


Draft document: Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident
Submitted by 牛山 元美, さがみ生協病院
Commenting as an individual

ICRP Publication 1XX  大規模原子力事故における人と環境の放射線防護  ― ICRP Publication 109 と 111の改訂―

草案に対するパブリックコメント

 

医師 牛山元美

私は東日本に住む臨床医であり、原発事故当時小中学生だった二人の子どもたちの母親です。

原発事故後に甲状腺がんと診断された福島の子どもたちの健康相談に従事しています。

ICRP報告書草案を読んで、福島や日本の現状への理解が不足していると感じ、以下のコメントをお伝えします。

 

  • 6.結論(222)について

原子力発電所の事故によって、「人々と社会を深刻なまでに不安にする」「原子力事故による社会、環境、経済への影響、さらに事故への対応は重大であり長期に続く」ことを、住民はしっかりと知らされるべきです。日本では、原子力発電所は非常に安全、事故は起きない、という意図的に偏った広報が国家的に行われ、地震多発国なのに、産業の少ない海辺の過疎地に多数作られました。原子力産業の安全な運営をICRPが本当に望むのであれば、日本のような地震多発国に作らないようにさせるべきです。

 

  • 6.結論(227)について

チェルノブイリでも福島でも、実際の放射能汚染は複雑な地形に沿って、意外なところにホットスポットを生じています。被曝者と非被爆者を区別することは本当は困難なのに、日本では、福島県だけを被曝地域とするかのような対応(県民健康調査が福島県でしか行われていないなど)がなされています。

そんな状態で、「専門家」たちは、福島県民を「被験者」と呼び、「低線量被曝の大プロジェクトがフクシマから始まる」と嘯きました。

原発事故の被害を過小評価する嘘の論文を海外でのみ発表するような御用学者がもてはやされ、年間20mSv の被曝を子どもにも強制することに異論を唱えた良識ある学者の社会的尊厳が傷つけられてきました。

「一般の人たちは放射能のリスクについて理解ができない」とICRPの委員が語るのを聞いたことがあります。一般の人たちが理解できるような説明をしていないだけのことであり、きわめて無責任で、「一般の人」を蔑み、人権、尊厳を尊重していない証です。

 

  • (Table 6.1. Reference levels for optimisation of the protection of people in the case of nuclear accidents.)について

日本では、「公衆」に対して、年間1mSvを超える追加被曝がないよう、また、医療現場で働く妊婦も、妊娠期間中の追加被曝が1mSvを越えてはならない、と法律で定められています。この上限を「1mSv」ではなく“the order of 1mSv”と言い換える根拠は何ですか?

年間5mSvを超える地域では、チェルノブイリでは移住権利が与えられています。

日本では、年間20mSv までは福島県民は新生児でも妊婦でも我慢するようにという「緊急事態」が現在も継続しています。周産期死亡率や小児甲状腺がんの多発と被曝の関連を否定する声明が出ても、その根拠はきちんと説明されておらず、不安や、行政に対する不満は募るばかりです。

数mSvの医療被曝でも、遺伝子変異のタイプによっては、小児白血病や乳がんなどが有意に増加している、という研究報告も数多くあります。

福島原発事故からまだ8年。低線量被曝、内部被曝による健康被害について判断できる時期ではまだないし、医学的研究も不十分です。

この時期に、公衆の被曝量限度を年間10mSvにする意味が理解できません。

公衆、一般の人、すべての被曝者の尊厳、人権を無視する行為です。

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